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第26話 羽をなくした風の精

last update publish date: 2026-08-05 19:00:52

雨上がりの匂いがする谷に、風の精は住んでいた。

風の精の仕事は、風を起こすことではなかった。花が揺れたがっているときにそっと背中を押し、雲が流れたがっているときにその道を空けてやる。それだけの、誰にも気づかれない仕事だった。けれど風の精は、その静かな仕事を心から気に入っていた。

羽は風そのものの色をしていて、羽ばたくたびに、季節のかけらのようなものがひとひらこぼれ落ちた。

その夜、谷には大きな嵐がきていた。雷が空を裂き、雨が横殴りに叩きつけていた。

谷のふもとで、風の精は小さな鳥の巣が転がり落ちそうになっているのを見つけた。今にも崩れそうな巣を、なんとか風で支えなければ。

風の精はこれまでにない大きな風を起こそうと、体の奥から力を振りしぼった。羽を思いきり広げたそのとき、すぐそばに雷が落ちた。

まぶしい光と、耳の奥まで響く音。体勢を崩した風の精は、自分の起こした風の力に、羽ごと持っていかれ
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